高瀬 悠人 「スマホの中の、薄い光」第2話 「まだ、終わりじゃない」

次の日も、また同じ時間、同じ路地裏。

高瀬悠人は、タバコに火をつけると、ゆっくり煙を吐き出した。
店の制服のまま、ネームプレートだけ外している。
別に見られたくないわけじゃない。誰にも興味なんて持たれていないことは、とうに知っている。

足元には、昨日と同じようなゴミが落ちている。
潰れたペットボトル、風に転がるビニール袋。

スマホを取り出し、また無意識に画面を開く。
昨日見た同級生の写真が、まだ頭の隅にこびりついている。
あいつは「正解」の道を歩んだのだろうか?
自分は「間違い」だったのだろうか?

考えても仕方ない。
それなのに、夜の静けさは、余計なことばかり考えさせた。

ふと、足元のゴミ袋が、風に煽られてこちらに転がってきた。
何も考えず、悠人はそれを拾い上げる。

近くにあったコンビニのゴミ箱に、ポイと放り込んだ。

たったそれだけのことだった。

別に、誰かに見せたくてやったわけじゃない。
偽善でもなかった。
ただ、ゴミを拾った。それだけ。

でも──

なぜだろう。

まだ、終わりじゃない

胸の奥に、ほんのわずかだけ、そんな声がした気がした。

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