次の日も、また同じ時間、同じ路地裏。
高瀬悠人は、タバコに火をつけると、ゆっくり煙を吐き出した。
店の制服のまま、ネームプレートだけ外している。
別に見られたくないわけじゃない。誰にも興味なんて持たれていないことは、とうに知っている。
足元には、昨日と同じようなゴミが落ちている。
潰れたペットボトル、風に転がるビニール袋。
スマホを取り出し、また無意識に画面を開く。
昨日見た同級生の写真が、まだ頭の隅にこびりついている。
あいつは「正解」の道を歩んだのだろうか?
自分は「間違い」だったのだろうか?
考えても仕方ない。
それなのに、夜の静けさは、余計なことばかり考えさせた。
ふと、足元のゴミ袋が、風に煽られてこちらに転がってきた。
何も考えず、悠人はそれを拾い上げる。
近くにあったコンビニのゴミ箱に、ポイと放り込んだ。
たったそれだけのことだった。
別に、誰かに見せたくてやったわけじゃない。
偽善でもなかった。
ただ、ゴミを拾った。それだけ。
でも──
なぜだろう。
まだ、終わりじゃない
胸の奥に、ほんのわずかだけ、そんな声がした気がした。
コメント